2013.04.10
税務会計
日本国内の勤務先からシンガポールのグループ会社に赴任し、退職した後も引き続きシンガポールに滞在している間に、勤務先の親会社の株式を取得し、その後帰国して再就職した場合、株式を取得した時点において、居住者なのか非居住者なのかを争った事例。(国税不服審判所H24.9.26)
シンガポールに赴任したあと退職。引き続きシンガポールに滞在中に株式取得したが、以下の点を総合的に判断すれば日本の居住者ではないか?と指摘された事案です。
当該退職後の期間における日本及びシンガポールでの各滞在日数
両国での各住居
退職後の職業活動(就職活動等)
生計を一にする配偶者その他の親族の居所及び資産の所在等の客観的諸事情
審判所は、下記の状況を総合的に勘案。
①日本とシンガポールでの各滞在日数に大差がないものの、日本に帰国するまで引き続きシンガポールの住居を生活及び職業活動の拠点とし、退職前後においてシンガポールでの生活状況に変わりがないこと
②就職活動等の結果、日本での就職が決まったものの、日本に帰国するまで無職のままであったこと
③日本国内に生計を一にする親族はいないこと
④両国での資産の保有及び管理等の状況
シンガポールに赴任した当初から客観的に生活の本拠はシンガポールにあると認められ、「非居住者」に該当しており、退職後においても退職前と同じく生活の本拠はシンガポールにあったと判断し、株式を取得した日においても「非居住者」に該当するとしました。
なぜ、居住者か非居住者かが争われるかというと、居住者であれば国内外を問わず所得に対して所得税が課税されるのに対し、非居住者であれば国内源泉所得に対して課税されるからです。
そのような場合、論点となるのは「生活の本拠がどこか?」ということです。
租税回避のために日本の非居住者となるように実態を整えるなど悪質なケースもあるようですが、近年においては海外赴任も多いため一般の会社員にとってもどのような基準で居住者・非居住者が判定されるか理解しておく必要があります。
2013.04.10