2012.04.19
税務会計
法人が内国法人から配当等を受けた場合には、その配当等の額は所得金額の計算上、益金の額に算入しないと定められています。(法23条)
会計上は配当を受け取れば受取配当金として営業外収益に計上されますが、税法上は益金に算入しないため確定申告時に所得から減算調整をする項目となります。
これは、配当を支払う側の法人においては既に所得に対して課税されており、配当を受け取る側の法人で配当等に課税をすると二重課税の問題が生じてしまうため、国内における二重課税の排除を目的として規定されているわけです。
個人株主においてはこの二重課税を排除する措置として配当控除制度を設けており、法人株主においては受取配当等の益金不算入制度が設けられています。
そもそも配当を収益に上げることでなぜ二重課税の問題が起こるのかが分かりにくい点だと思います。
繰り返しますが、「すでに支払い側で課税された所得である配当を、受け取り側で収益に上げて課税すると二重課税の問題が起こる」ということです。
受取配当等の益金不算入の規定の前提として、「日本の法人税法では法人擬制説を採用している。」ということを理解しておく必要があります。
法人擬制説とは法人は株主の集合体であり、株主の立場を重視すべきという説であり、法人実在説とは法人と株主は別個の存在であるという説です。
法人擬制説の立場からすると法人は株主の集合体であって、株主とは最終的には個人に行きつくという考えで、法人税というのはあくまで所得税の前払いという性質であるから、同一の所得に対して二重課税することを認めず、その二重課税の排除の方法の一つとして受取配当等の益金不算入制度を採用しているのです。
また、法人実在説の立場からすると法人と株主は別個の存在であって、そもそも二重課税の問題が生じないことになります。
日本は上述の通り、法人擬制説を採用しているため、二重課税が生じるという結論になるのです。
上記の趣旨からすれば配当等は全額益金不算入となるはずなのですが、企業支配的な株式保有についてはこの制度の趣旨に合致する一方、昭和25年税制改正の創設当時に比べ、投資目的での株式保有が増大し、こういった投資目的で得た配当については益金不算入の趣旨に合致しないとの意見があり、昭和63年税制改正で株式の保有割合に応じて益金不算入割合を減少させるようになりました。
現在では25%未満の出資であれば50%は益金不算入、残りの50%が益金算入することとなっています。
また、証券投資信託からの収益の分配については配当と株式の譲渡益が含まれており、どれくらいの割合で配当が含まれているかを個別に計算するのは困難であるため、収益の分配のうち1/2を配当として益金不算入の対象としています。
法人税法の規定の中でも受取配当等の益金不算入制度については重要な考え方を含んでおり、その制度の趣旨をきちんと理解しておく必要があるでしょう。
2012.04.19