2022.04.27
友だちから見た田中会計
左から、名張市経済好循環協議会の角谷さん、市川さん、鷲尾さん、田中です
日本料理「花いかだ」の大将と別れた後、私たちが向かったのは株式会社伊和新聞社。大正15年の創業以来、三重県の伊賀・大和地域の新聞を作り続けてきた会社です。田中慎さんが制作に携わった、名張市経済好循環協議会発行の冊子『事業承継の手引きノート 未来の名張へつなぐ一歩』を印刷してくださったのが、この伊和新聞社さんでした。共に冊子を制作した中小企業診断士の鷲尾 裕二さん、社会保険労務士の市川 周さんと、名張の未来について語ります。
田中:なんとか無事に完成しましたね。おつかれさまでした!
市川:読みやすい本になりましたね。イラストや図が多いし文章もやわらかくて、すごくいいと思います。こういう冊子って、どうしても突っ込まれるリスクを考えて堅苦しくなってしまいがちなので。
鷲尾:上っ面のテクニックではなく、事業承継を考える時に本当に大事なことを詰め込ませてもらえたと思います。自分自身との対話を大事にしてほしいという、僕が企業支援で必ずする話をがっつり書かせてもらいました。
田中:全体を通して、色んな角度からの問いかけがあるんですよね。たとえば、
「これから10年先にいまの業界はどうなっていますか?」
「社員・取引先・金融機関等には、いつ後継者候補を紹介する予定ですか?」
「あなたは『経営者』としてどうありたいですか?」
とか。参考書というよりノートとして使ってもらえるように書き込む欄をたくさん作ったので、ここに考えを書き留めながら、じっくり自分自身や事業と向き合う時間を持ってもらえるといいですね。
市川:こういう独自の取組をしている地方都市って、なかなかないですよね。名張市さんはすごいなと思いました。経済好循環協議会さんが商工会議所や他の組織ともしっかり連携されていて、事業者が困った時になんでも相談できる雰囲気がありますね。
田中:名張に来て、新鮮だったのは、事業者さんとの距離が近いこと。セミナーや個別相談をさせてもらった時も、皆さんすごく気さくにお話してくれました。
市川:このあたりはもともと大阪のベッドタウンなんです。支援機関の方々も若い時は大阪に通っていた人が多いので、地元で働く人ばかりの地域とはちょっと空気が違うかも。だから、外の人との交流にも積極的なんだと思います。
田中:なるほど。僕ら3人、誰も名張市に拠点がないのに、よう任せてくれたなと思ってました。鷲尾さんは三重県四日市市、市川さんは三重県伊賀市ですよね。
鷲尾:名張の方々に、新しい風を入れたいという思いがあったんですよ。都会に比べて知識や情報が遅れているという感覚がやっぱりあるから。専門家も年配の方が多いので、旧態依然としたやり方がけっこう残っているんです。だから、お二人に入ってもらえて皆さん喜んでるんですわ。
市川:どの業界も高齢化してますよね。若い人が少ないから新しい考え方が入ってきづらいし、後継者の問題も多いです。地元の若い世代は都会へ出て帰ってこないし、新しく来た若い人は、既存の事業を承継するよりも自分で起業されるので。
田中:今日も散策しながら半日過ごしたんですけど、すごく歴史のある街なので、新しいものを受け入れて発展していけるといいなと思います。事業承継は1つの会社が続くか続かないかというだけの話じゃなくて、地域全体の未来を紡いでいくために必要なことなので、みんなで取り組めるといいですよね。
市川:伊賀も名張もおもしろい観光資源があるのに、それぞれが点でしかないんですよ。連携して大きなイベントを企画するような動きができていません。アイディアはぽろぽろ出てくるんですけど、誰もそれをまとめて実現するところまで持っていけなくて。もったいないと思います。若い人たちも、同じ分野で集まっていたりはするけど、業種を超えたコミュニティはまだないんじゃないかな。
鷲尾:今回の冊子は、大阪から田中経営会計事務所さんが、そして京都から編集・デザインのおいかぜさんも仲間に加わってくれて、しかもこうして名張まで足を運んでくれてね。僕は嬉しい!排他的にならず、これからもつながりを広げていけたらいいなぁ。
田中:いつでも来るし、呼んでや。
鷲尾:僕の野望はね、(田中)慎ちゃんに三重支店を作ってもらって、新しい動きのきっかけを作ってほしい。僕も支店長代理補佐とかで働きますし、三重での営業も頑張りますから!地方は競争が少ないから、僕らみたいな士業の人間はもっと揉まれるべきやと思うんですわ。事業者の方々は先生の言うことを信じるから、専門家が時代についていけないと地域全体の競争力がなくなっていきます。僕はそれが地方の大きな問題やと思っていて。普通にやっていたら、都会との差がどんどん広がってしまう。
市川:田中さん、ITに強いんですよね。やったらめっちゃ需要ありますよ。まだまだITを全く活用できていない人の方が多いので。最近も、税理士さんに電話しないと自社の売上がわからないっていうお話を聞きました。
田中:あぁ、その状況は良くないですね。うちは丸投げの仕事は受けていないので、日々の売上や経費の入力は自分でしてもらいます。経営状況を経営者が自分で把握しておくことは、とても大事なので。
鷲尾:売上をちゃんと把握しましょうねっていう話は、税理士じゃなくても、経営の支援をする人間なら誰でも言えることじゃないですか。経営者なら当然知っておくべきやと僕は思います。仕事をしながら入力なんてできないと思っている人がいるけど、むしろ自分でやった方が楽になるはずやし。難しいからできないわけじゃなくて、やってみたら簡単なのに、そのきっかけがないだけ。
市川:給与とか年末調整とかも困っている人がめっちゃいますよね。もっと楽なやり方があるのに、皆それを知らないんです。税理士がついていても、クラウド会計を扱えない人も中にはいますから……。そうなるともう誰に聞けばいいのかわからないし、ちょっとしたアドバイスをしてくれる人が必要なんです。
田中:東京のベンチャー企業では、数年前から会計はクラウド管理が当たり前になっています。一方で、地方では手書きで帳簿をつけてる人がまだまだいて、情報格差が激しいですね。名張で毎月セミナーしようかな。うちだけじゃなくて市川さんの労務の話とか、他の分野の人も呼んで、ITを軸に色んな話ができたらいいですよね。名張の事業者さんの役に立つと思う。
鷲尾:伊賀・名張にIT革命を起こしてください!
田中:ぼちぼちええ時間なんで、続きは打ち上げで。花いかださんに向かいましょうか!
協力:
株式会社伊和新聞社
鷲尾 裕二さん 資金繰り会議
市川 周さん あまね経営労務事務所
文:柴田 明 写真:山本 容子
2022.04.27