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税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと

2023.08.30

友だちから見た田中会計

会社のうつわをでかくする、バックオフィス業務の学校を始めました。| vol.13

これまで数々のセミナーを開催してきた田中経営会計事務所(以下、田中会計)が、より実践的な学びを深める場をつくり始めています。

最初のプログラムは「社会的企業のための会計思考」。

タイトルから、実務的なノウハウよりも「考え方」を学ぶべしというメッセージをひしひしと感じます。この日の参加者は、バックオフィス担当者、経営者、クリエイター、金融機関勤務後に独立した人など様々。アットホームな雰囲気で授業が始まりました。「そもそも会計ってなんなん?経理と何が違うん?」という状態からのスタートだった私ですが、

会計は、仲間を増やすためのビジネスの見える化に役立つ。

会計は、事業について自分で意思決定するための材料になる。

という田中慎さんの言葉に大きな希望を抱き、ドキドキしながら会計の世界へと足を踏み入れていきます。

ここからはネタバレ続出なので、真っさらな気持ちでプログラムに臨みたい方は、そっとページを閉じてくださいませ。

あなたが見ている会計は、動いていますか?

計4コマのプログラムの中で、私たちが何度も繰り返し取り組んだのは、とあるパン屋さんの損益計算書と貸借対照表の記入でした。2人1組で

「売上の22万円は売掛金としてここに書いて……」

「備品は資産の欄でしたっけ?やっぱりこっち?」

と、習ったことを確かめながら、日々の出来事を2つの書類に落とし込んでいきます。

1日目の目標は、会計を動きで見られるようになることです。そのために、まず「売上−費用=利益」という考え方をやめましょう。

最初に言われた時にはいまいちピンと来なかったこの言葉が、仕入れや販売のシミュレーションを繰り返すうちに、少しずつ実感に変わっていきます。「最初に費用があって、その費用が利益を生んでくれるんです。だから、どうやってカットするかを考えるよりも、費用の質を上げることが大事。」という慎さんの言葉に、大きくうなずく人、笑顔を返す人、真剣に受け止める人など、色々な反応がありました。

・損益計算書(PL)
・貸借対照表(BS)
・資金繰り表

この3つの動かし方を教わり、損益計算書と貸借対照表の記入方法を何度も確かめ、苦戦しながらも、確実にスキルアップできているという達成感を噛みしめる私たち素人チーム。一方で、もともと会計や財務に詳しい参加者の方も、「今までと違う見方を教えてもらって、すごく新鮮でした!」と言っていました。

中でも複雑な「減価償却」については、制度の目的やこれがないと何が困るかという背景も含め、ていねいに説明してもらいました。

会計の視点があると、良いアイディアを活かしやすい

新しいことを学んでいると、時間はあっという間に過ぎていきます。「限界利益」や「固定費生産性」のような難しい言葉もなんとなくわかったような気になりながら、後半は「どうすれば生産性を上げられるのか」という誰もが知りたい問いへと話が展開していきました。印象的だったのが、慎さんのこの言葉。

事業改善のための会議をする時に、会計をベースに話し合えると、ちゃんと議論が積み上がっていきます。
アイディアがどんどん出ても、会計の動きに紐づいていない状態では、発散するばかりで実現までたどり着きづらい。

なんと、会計を事業に活かすために必要な知識の大半は、このプログラムで習得できているそうです。

こんなの序の口で、この先に難しい計算式や関数が延々と続いていると思い込んでいたので、これには驚きました。ほんまかいなと若干疑いながらも、「会計レベル、めっちゃ上がってますよ!」と言ってもらえるとやっぱり嬉しいものです。

しかし、大事なのは知識量ではなく「考え方」だと捉えると、この先に別の深みが垣間見えます。会計の知識があっても、それを実際の事業と結びつけて未来の動きを考えるとなると、また別のスキルが求められるんですね。経営者やコンサルタントでも、会計をつかいこなせている人は決して多くはないと言う慎さん。後半はグループワークがメインになり、より実践的なプログラムが待っています。

来年、再来年、どんな売上を目指すのか

それにしても、パン屋の商売はなかなかたいへんです。手元の資金繰り表に並ぶ数字を見ながら、いつも美味しいパンを食べさせてくれている全てのパン屋さんに「すごいです!ありがとうございます!」と拍手を送りたくなりました。

たとえば、月に80万円の売上を作ろうと思ったら……パンの単価を200円とすると月に4,000個、つまり、20日営業で換算すると1日に200個を売らなくてはいけません。賃料やパートさんのお給料を払い、原料を仕入れ、内装や設備に投資し……細かく区切られたExcelのセルには、どうしたってなかなか厳しい数字が並んでしまいます。

恐ろしいことに、人は費用を見るとカットしたくなります。でも、働く人のパフォーマンスを下げるような費用削減は、絶対によくないです。
改善策は、細分化した部分ごとに考えるのではなく、全体を見て考えましょう。

という教えを授かり、「ここからは、皆さんのクリエイティビティが発揮されると思いますんで」という前振りでグループワークが始まりました。この案を採用するとどの数字が変わるのか、真剣に考えながら、それぞれが思い描くパン屋の経営改善に取り組みます。

固定費は減らせるのか、
スタッフにどう働いてもらうのか、
新しい設備を入れてはどうか、
お店のターゲットは……

色々な意見が飛び交った結果、私たちのグループは、パンマニアを狙った独創的なショップとして突き進んでいくことを決めました。パンへの愛を大事にしようという思いを、最後の5分ほどでなんとか数字に落とし込んでいきます。今は赤字ですが、計画通りにいけば、2年後には318万円の利益が出るはずです!

ちなみに、もう1つのグループは非常に堅実なプランを提案されていて、たいへん勉強になりました。きっと回を重ねるごとに、このプログラムから多種多様なパン屋さんが誕生していくことでしょう。

バブル期に流行った節税対策などの面白トピックを交えながら、経営改善をどういう順番で考えていけばよいのかを教えてもらい、90分×4回のプログラムが終了。学ぶ楽しさを存分に味わった2日間でした。

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読んでくださっている方の中には、会計は大事だとわかっていながら、つい避けてしまう……という方もいるのではないでしょうか。私自身がまさにその一人で、フリーランスとして働きながら、身近にいる経営者たちの奮闘を時折感じつつも、会計界隈のものごとには距離を置いて生きてきました。そんな方にはぴったりのプログラムだと思います。

苦手意識を持っていたものに少し近づいて、おもしろい面を発見することができて、おまけに新しい人や視点との出会いもあって。とってもいい経験をさせてもらいました。今後に活かせるよう、そしてせっかく覚えた損益計算書と貸借対照表を忘れないよう、がんばります!

さて、次のプログラムの講師は田中会計の武田 幸子さん。
9月7日(木)、9月21日(木)の午後に京都で開催予定です。ぜひご参加ください!
freee会計の正しい使い方と月次処理の実務を学ぶプログラム

文・写真:柴田 明

2023.08.30