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税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと税理士 / 中小企業診断士 / イノベーション・コーディネーターとして働く中で田中慎が考えたこと・感じたこと

2025.03.18

freee友だちから見た田中会計顧問先インタビュー

会計を整えることで、会社を良くしていく方法が明確になる

ウェックス本社の屋上にて

お父さんから消防設備の会社を事業承継した、株式会社ウェックスの代表取締役社長 渡辺 淳司さん。田中経営会計事務所(以下、田中会計)との出会いは、東京から地元の静岡県熱海市に戻って数年が経ち、代表に就任して本格的に新しい体制をつくっていこうというタイミングでした。

観光客でにぎわう熱海駅から3駅。網代(あじろ)という海沿いの小さなまちにある本社を訪ねます。

もともと「士業は地域の中で探すもの」と思っていたという渡辺さん。400kmも離れた大阪の会計事務所を経営のパートナーに選んだのはなぜなのか、ウェックスさんにとって田中会計はどんな存在なのか。田中慎さんと担当の武田さんと共に、お話を伺いたいと思います。

網代駅に到着

目の前の数字の読み解き方がわからなくて、苦しかった

渡辺:最初にお会いしたのは、2年前ですよね。まずオンラインでお話しして、次は熱海まで来てくださって、その時にかけてもらった言葉を今でも覚えています。「辛かったでしょうね」って言ってくれたんですよ。

田中:当時は、業務的にも精神的にも、本当にたいへんな時期でしたよね。freeeを使い始めたけど、先代からお世話になってきた税理士さんに提出する書類は別のソフトで作っていると聞いて、「freeeを正しく活用できたら絶対に楽になる!」と思いました。

渡辺:アナログな作業ばかりで、しかもそれぞれの数字がどういう意味を持つのかもわからなくて、しんどかったですね。もと看護師で経験も知識もない妻に経理を任せることにしたので、お互いにすごくストレスが溜まってしまって。

武田:打ち合わせでも、お二人の空気がピリピリしてましたよね。「なんでそんな言い方するんですか!」って私たちが間に入ったりもして(笑)

渡辺:本当にけんかが絶えなかったんですけど、お二人とfreeeのおかげで仲良くなれました。僕も当時はBS(貸借対照表)も読めなかったので、野球で例えるなら、「5点くらい取れてると思うから、多分勝ってるはず」っていうあいまいな状態で9回まで戦ってたようなものでしたね。見立てと税理士さんから出てくる数字が乖離していることもあって、このままでいいんだろうか……と悩んでいました。

武田:預金残高とPL(損益計算書)しか見ない経営者の方も、実は多いですよ。でも、社長がリアルタイムに数字を見て動ける会社はやっぱり強いです。

渡辺:そうですよね、見えている景色が変わってきたという実感があります。この地域の中にも悩んでいる経営者がたくさんいると思うので、おすすめして回りたいくらいです。

田中会計を整えることで、新規事業をどう展開するかなどの判断もしやすくなるし、会社を良くしていく方法が明確になるんです。次にこう打てば勝てる、という道筋が見える。そこに税理士の仕事のやりがいがあるなと思います。

地域のために何かしたいという気持ちが、徐々に湧いてきた

ー 田中会計の存在を知ったきっかけは?

渡辺:経営者になってバックオフィスの体制を見直す中で、ネットで色々調べていたんです。そしたら、kintoneを使っている消防設備士の方を発見して。うちは技術者がkintoneで現場の報告をするので、すぐにfacebookで「お話し聞きたいです!」と連絡しました。忘れた頃にお返事をいただいて、その方のご紹介でオンライン打合せをセッティングしてもらいましたね。

田中:うちをよく知ってくれている人からのご紹介だったし、熱海は遠いなと思いながらも、これもご縁だからまぁ1回行ってみようと。で、まちを案内してもらって、夜は美味しいものを食べながら色々お話しして。地域を大事にしながら事業をしている人がすごく好きなので、渡辺さんの思いを聞いて応援したいと思ったな。

渡辺:東京から戻ったばかりの時は、地域への想いは正直あんまりなかったんです。その頃の熱海はかなりさびれていて、財政も危機的でした。今は観光客でにぎわっている駅前の通りも、がらんとしたシャッター街になっていて。

ー そんな時代があったんですね。今日も熱海駅はすごい活気でした!こんなに寒いのに駅前は夏休みみたいな空気で、驚きました。

渡辺:シャッター通りの中にカフェや宿をオープンして、人生をかけた挑戦で熱海を盛り上げてきた人たちがいるんです。当時はうちの会社も厳しい状況で、赤字を脱却するために必死だったんですけど、会社が持ち直してくると外に目が向くようになって。

自分はその人たちが頑張った恩恵を受け取っているだけなんじゃないか、と思い始めました。新しく店ができたり移住者が増えたりすると、そのぶん工事の仕事が増えるので、うちにとってもありがたいんです。だんだん「俺も一緒に挑戦したい!」って気持ちが湧いてきましたね。

地域の交流拠点「AJIRO MUSUBI」をオープン

田中:網代の地域づくりのために、地域の人たちと一般社団法人を立ち上げて、廃校になった小学校の利活用を始めたんですよね。事業をしっかり育てながら、一方で会社を地域に開いていっている。どちらも着実に積み上げていて、すごくいいなと思ってます。

渡辺:コロナ禍の2021年に、地元の先輩が東京から帰ってきたんです。彼が「網代をもっといいまちにしたい!」という思いで、同じ年に廃校になった自分たちの母校をどうにかできないかと言い始めて。一般社団法人あじろ家守舎を立ち上げて、僕も副理事を務めることに。とはいえ、鉄筋4階建・敷地7000㎡と建物が大きいので、リノベーションの費用も維持費もかかるし、どうしたものかと……。

AJIRO MUSUBI

渡辺:「地域の活性化は、そのまち出身の人じゃないとやっぱり難しい。でも、地元の人だけでやろうとすると上手くいかない」と聞いて、確かにそうだなと思いました。一般社団法人あじろ家守舎には、たまたま東京から移住してきたIターンのメンバーもいますし、地元の人の思いと外からの知恵がうまく混ざっていると思います。皆で事業計画を練って、熱海市役所の方々も前向きに動いてくださって、無事に補助金をとることができて。2024年7月に交流拠点「AJIRO MUSUBI」をオープンすることができました。

武田:スピード感を持って新しいことを仕掛けながら、会社も順調に成長させているのがすごいと思います。

渡辺:上手くいっているように見えるかもしれないですけど、色んなことがありましたよ。地域の方からの反対があったり、社員からも、ウェックスがまちづくりをやる意味って何なんですか?と聞かれました。すぐに全員に理解してもらうなんて不可能なので、言い続け、進み続けるしかないと思っています。

武田:代表になるまでに、5年間は現場に出られてたんですよね。事業承継ならではのご苦労が山ほどあったと思いますが、お客さんや社員さんの思いもしっかり理解した上で改善を重ねてきたから、お父様も安心して任せられるんだと思います。

会社の数字にも、渡辺さんの社員さんとの向き合い方が表れている

田中:今目指していることや、乗り越えたい課題はありますか?

渡辺:やっぱり一番は、社員の皆がもっと輝ける会社にしていきたいです。僕が一人ひとりと向き合う時間をもっと作らないといけないと思っています。残業してなんとか回している部署もあるので、働き方の改善も必要ですし、それぞれのやりたいことや適性に合った仕事ができるように考えたいですね。きれいごとだと言われるかもしれないけど、社員もお客さんも幸せな会社を実現したい。

渡辺:あとは、売上をしっかり伸ばしていくこと。まずは1億円から3億円まで持ってくることができて、技術者のスキルやサービスの質では負けていないという自信もつきました。網代には10億円規模の会社がおそらくないので、そこを目指したいです!

武田:渡辺さんは、いつお会いしても「まだまだです」「これからです」っておっしゃるんです。苦しい経験もしながら、常に上を見続けている。私たちもすごく刺激をもらっています。

田中会社の数字にも、渡辺さんの社員さんとの向き合い方が表れてますよ。給与設定のしかたとかね。これからも経営のパートナーとして、色んな話ができればと思います。今日はありがとうございました!

以上、田中会計の顧問先インタビュー第4弾でした!

1月に移転された新しい本社オフィスを初めて訪れた、田中慎さんと武田さん。屋上にあがるとキラキラ光る海が見えて、「ここでバーベキューしたいな!」「熱海は花火大会が毎月あるらしいから、次はその日に来よう!」と大盛り上がり。後ろを振り向くと山が近くて、なんとも網代らしい景色を楽しみました。

インタビューの後は、早咲きの桜が咲く熱海のまちを終電ギリギリまで堪能して、関西へと戻ったのでした。

協力:株式会社ウェックス webサイト
文・写真:柴田 明

2025.03.18